音楽と波動 アンナ・ヴィニツカヤ(Anna VINNITSKAYA)のピアノ・リサイタル

クラシックファンでもないのですが、先日いってきたアンナ・ヴィニツカヤのピアノリサイタルが素晴らしかったので書いておこうと思います。事前に数曲アンナ・ヴィニツカヤのピアノをYoutTubeで聴いてみたのですが、少し特色のある音色だなと思ったくらいで余り印象的なものでもありませんでした。テクニックはあるなと思っていました。

ピアノリサイタルは2月2日、サントリーホールでした。19時前に着席、会場を見回すと、2階席後方を中心に空席はかなりありました。自分の席の周囲も結構あきがありました。サントリーホールでやるくらいの音楽家ではあるが、満員近くにはならないのだなと思いました。
アンナ・ヴィニツカヤが出てこられたとき、YouTube比でちょっと痩せた?と思いました。ドレスがこの日の演奏とよく似合っていました。

演奏内容ですが、次のとおりでした。

プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第4番 ハ短調 op.29
Prokofiev-Piano Sonata No.4 in C minor,Op.29(1917)

ドビュッシー:前奏曲集
Debussy-Préludes

 第1巻
  第6曲「雪の上の足跡」
  Des pas sur la neige

  第7曲「西風の見たもの」
  Ce qu'a vu le vent d'ouest

  第8曲「亜麻色の髪の乙女」
  La fille aux cheveux de lin

 第2巻
  第7曲「月の光が降り注ぐテラス」
  La terrasse des audiences du clair de lune

  第12曲「花火」
  Feux d'artifice

ドビュッシー:喜びの島
L'Isle joyeuse

ショパン:24の前奏曲 op.28
24 Préludes op.28

感想ですが、最初の曲の出だしから波動がすごくて体がふるえました。最もよいと思ったのが、プロコフィエフのピアノソナタ、ドビュッシーの「雪の上の足跡」「西風の見たもの」の3曲でした。ショパンもよかったと思います。わたしの中では最高レベルの好みの音と弾き方でした。頭の特定部位も刺激を受けました。オーディエンスからも拍手が盛大で、プロコフィエフ、ドビュッシー、ショパンそれぞれの曲の終わりにはブラーヴァの声が多かったと思います。

特に印象的だったのが、「雪の上の足跡」(Des pas sur la neige)でした。地味な曲ですがぞくぞくするような、迫力でした。呼吸一つが惜しいほどの緊迫感をもって聴き、また感じました。静かな流れの曲だけに一音一音に高い波動がのっていて、深く感銘を受けました。何という崇高な波動の音楽でしょうか。曲が終わったときにさりげなく周囲を見ましたが、目元を拭っている方が少しいたような気がします。

「西風の見たもの」は、非常に好きな曲です。たたみかけるような音と波動で、劇画風に表現すると、「ビリビリ」と体が震えるようでした。

「西風の見たもの」の次の曲が「亜麻色の髪の乙女」で有名曲でしたが、曲調が変わり一気に弛緩した雰囲気についていけませんでした。それまでアンナ・ヴィニツカヤが繰り出す幻想的で荘厳な世界にどっぷりつかっていたので自分自身の感情の切替がうまくいきませんでした。
このため、「亜麻色の髪の乙女」の後の「月の光が降り注ぐテラス」「花火」では、気持ちがどこかに飛んでしまい記憶がなくなってしまっています。(演奏は多分すごくよかったと思います。)拍手はしていたのでちゃんと聴いているとは思いますが、記憶がないとは惜しいことをしました。
今後は、こういうことがないよう心の準備ができるようにしていきたいと思います。別の見方をすればアンナ・ヴィニツカヤの演奏がそれだけすごかったということですが・・・。

休憩時には、アンナ・ヴィニツカヤのCD売り場は人だかりができていて、CDは完売したとのこと。あれだけすごい演奏を聴かされればその気持ちもわかります。終了後にサインがもらえるそうでした。演奏が始まる前はアナウンスがあったにもかかわらず、CD売り場に人は余りいなかったのでわたしも品定めしたのですが、ラフマニノフの2番のみだったのでパスしてしまいました。プロコフィエフとかだったら買うところですが・・・。

休憩を挟んだショパンは気持ちを切り替えられたので、大丈夫でした。プレリュードの途中にもブラーヴァを言う人がいましたが、それほどの出来でした。わたし自身は、アンナ・ヴィニツカヤの演奏に限っていえば、ゆっくりした余り有名でない前奏曲の方が波動ののりもよく好みでした。

なお、アンコールは次の通り。ショスタコビッチの2曲がとてもよかったです。後味よく終わりました。アンナ・ヴィニツカヤの地の趣味はこんな曲なのかなと思いました。お子さんでもいるのでしょうか。微笑ましく思えました。

アンコール

ショパン:12の練習曲 Op.10-1  
12 études Op.10-1

ショスタコーヴィチ:人形の踊りより ガヴォット
Gavotte, from Dances of the Dolls

ショスタコヴィッチ:人形の踊りより ロマンス
Romance, from Dances of the Dolls

アンナ・ヴィニツカヤの演奏は、どの曲に対してもしっかりと自分の世界感を確立させてきている印象を持ちました。技巧も超絶でした。素晴らしい演奏会に立ち会えたことを感謝して帰途につきました。


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